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0202
『BANDAGE バンデイジ』



2010-02-02 (火)
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映画『BANDAGE バンデイジ』観ました。

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『BANDAGE バンデイジ』は、90年代のバンドブームを舞台にした、あるバンドと女子高生の物語で、小林武史氏・岩井俊二氏の共同プロデュース、小林武史氏が初監督で岩井俊二氏が脚本、主演は赤西仁くんです。
もっと早くに観に行きたかったけど、どうしても時間がとれなくて、先日やっと行けました。

これは本当にいい映画ですね。
かつて音楽に胸を熱くしていた人たち、かつて夢をもっていた大人たち、今を謳歌する若い子たち、いろんな人に観てもらいたいと思いました。
観終わったあとのあの感情を言葉で表現しようとすると、色褪せてしまう気がするというか、映画の空気感を損なってしまうような気がして少し気が引けてしまいますが・・・とりあえず感想を語ってみようと思います。ネタバレ的な部分もあります。すみません。


LANDSのボーカルでリーダーのナツ役の赤西くんは、不思議なほど映画の世界に溶け込んでいました。
ナツは決してカッコイイ役じゃないんですよね。リーダーなのに才能ないし優柔不断で馬鹿で軽くてダサくて弱くて、っていう、結構どうしようもないヤツ。
そんなナツが、赤西くんの持つ独特の佇まいで味付けされ、コミカルで飄々としながらもどこかひたむきで、不器用で自分も周囲も傷つけながらも、それでも手探りで未来を探しているような・・・どうしようもないけれど、人間味があって愛しくなる人、そんな魅力的なキャラクターとして息づいていました。ナツのセリフの間とか、すごい好きです。

そして、小林武史監督の映像センスがものすごくいいです。
どこか岩井映画に似た空気を醸しつつも、もっとクールで。
ハンディカメラで追っているような映像と、対象物を見せるようで見せないというじらされる感じはドキュメンタリー的で、それでいて、煙を吐き出す工場や美しい夕景の映像はどこか非現実的で・・・。
寒々しい現実感と少し甘いファンタジックな部分が混在しているような不思議な感覚で、そのバランスが心地よかったです。

好きなシーンは本当にたくさんあります。
ナツとアサコ(北乃きいさん)やアサコママ(斉藤由貴さん)を交えてのコミカルな会話。おバカなナツが笑えました。
終盤、ボロボロになったナツが、アコギを弾きながら歌うシーン。歌っているのは、レコード会社の方針によってバッサリカットされてしまった大サビのフレーズ。泣いているようなかすれた声が、もうやるせなくて切なくて。長い映像の着地点の画も、物悲しくてすごくよかった。
ユキヤ(高良健吾さん)とアルミ(柴本幸さん)が練習スタジオに現れ、『二十歳の戦争』を歌うシーン。バラバラのようでも、音を奏でれば繋がってしまう絆、激しく怒っていたはずのマネージャーのユカリ(伊藤歩さん)の泣き顔が印象的です。
そして、やっぱりラスト。
数年後、レコーディングスタジオで歌うナツ。歌うことの喜びに満ち溢れているような、美しい顔で歌うナツ。無音のスローモーション。時が止まるかのように、ナツに釘付けになります。
スクリーンの中のアサコと同じで、ナツの唇の動きだけで、何の曲を歌っているかすぐにわかってしまいました。
観客である私もいつの間にかLANDSファンになっていたみたいで、ナツが今も歌い続けていてくれた、それだけで涙が溢れてしまいました。
そして、止まった時間を促すように流れ出す主題歌。間合いが絶妙で、イントロだけでもう号泣です。
───きっと何年たっても変われないものがある
という歌詞が、改めて胸に染み入りました。
音楽への愛情が溢れている映画だと、しみじみ思いました。
音楽プロデューサーである小林監督だからこそなのかもしれません。


夢を追うというのは、ときに非情で残酷なものです。
アマチュア時代は好きという気持ちだけで突き進んでいけても、プロになって商業ベースに乗せようとしたときに、好きだけでは成り立たない現実にぶち当たります。それは音楽でも映画でも小説でもマンガでも、どんなジャンルでもたぶん同じ。
売れセンを目指したときに、大切にしていた何かが失われていく感覚は、好きなことを仕事にした人ならば一度や二度必ず経験したことがあると思います。
波に上手く乗って一流になれた人も、傷ついて目標を見失ってしまった人も、皆心のどこかで、“折り合いをつけるオトナの自分”と“青臭い誇りにこだわり続ける自分”とが葛藤しているのではないでしょうか。
“好き”で始めたことだからこそ、どちらか一方だけを選ぶことは出来ないのです。

私自身も好きなことを仕事にした人間なので、本当に共感する部分が多かったです。
(といっても全然人気ないし売れてないし、業界の片隅になんとか置いてもらってるという表現が妥当なくらいなので、引き合いに出すのも申し訳ないのですが・・・)
辛いことや報われないことも多いけれど、それでも離れられずにいるのは、たぶんこの仕事が好きだからなんでしょう。


そうそう、90年代のバンドブームを知る人には懐かしいシーンもいっぱいありました。
私自身も十代の頃は色んなバンドに夢中になっていて(年がバレますが)、学校帰りにライヴとか行ってたので、あるあるネタが多くてニヤリとしてしまいました。チケットを取るときに「公衆電話が一番」というようなセリフがあるのですが、これホントに定説だったんですよね。当時自分もやってました。笑
今なら携帯が一番繋がる気がします。(※あくまでも個人的感想です)
当時の私は結構雑食でしたが、好きになるバンドで共通していたのはギターの音の色っぽさだったような気がします。一番ハマったのは THE YELLOW MONKEY で、洋楽ならNirvanaとかグランジ系、Suedeとかのブリティッシュ系も大好きでよく聞いてました。
そして今は何故かKAT-TUNというわけですが。。。

LANDSの曲では、アルバム1曲目の『オリンポス』がすごい好きです。ドアーズっぽいオルガンの音と、程よく荒削りなところがいかにもインディーズ風味でドキドキします。
このインディーズ感ある音を、小林さんはちゃんと計算して作り出せるんですもんね。本当にすごい人です。
インディーズ風味といえば、映画の冒頭でイントロだけ使われる曲もインディーズぽくて好きですね。ドラムのスネアの音で始まり、ベース、キーボード、ギター、と音が重なっていくとこがしびれます。(曲名はわかりませんが、BANDAGEの公式サイトで流れている曲です)
あと、映画の中では使用されていませんが、『鼓動』という曲も好き。ギターの音色が色っぽいです。
赤西くんは、語りかけるように歌うので、日本語の詞だとすごく胸に響きますね。
KAT-TUNでのソロ曲では英語詞が多いですが、もっと日本語詞の歌も歌ってほしいと思いました。


語りたいことがたくさんあって上手くまとめられなかったので、思いがけずとりとめもなく書いてしまいました。
私の中では映画の余韻がまだ続いていて、その後ずっとアルバムを聞いています。
近々、もう一度観に行こうと思います。

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